淋病は聖書の中に

古代から多かった性感染症は、「淋病」で聖書に記述があります。「尿道から炎症で漏れてくるものがあるなら、その人は汚れている。漏れだす汚れは次のようなものだ。尿道からウミがでてくるか、尿道にたまっている場合である」とあります。紀元前400年ころには、医学の神様と言われる古代ギリシアのヒポクラテスが、淋病についての詳しい記録を残しています。

しかし、淋病などの性感染症がセックスでうつる病気であることは知られず、それがわかるのは15世紀になって、梅毒が流行してからです。

コロンブスは新大陸の発見と同時に梅毒も発見した!?

淋病は古くからある病気ですが、梅毒は15世紀に突然はやり始めた病気です。梅毒がどこから来たのかは諸説ありますが、最も有力なのが、コロンブスが新大陸から持ちこんだというものです。クリストファー・コロンブスたちの探検隊は、長い船旅での禁欲生活を過ごした後、新大陸で原住民女性を見つけると性交渉をもちました。

合意の上のものもあれば、強姦同前のものもあったでしょう。ヨーロッパやアジア、アフリカには古代の人骨に梅毒の痕跡はみつかりませんが、古いアメリカ原住民の骨には、梅毒の症状がみられるものもあります。アメリカ大陸にしかなかった病気に感染して、大陸発見という成果とともに梅毒も土産としてヨーロッパに持ち帰ったのでしょう。

兵士たちが、娼館を通じて世界中に拡散

新大陸からの帰途の長い禁欲ののち、バルセロナに到着した一行はすぐに娼館にかけこみ、梅毒を一気にばらまきます。コロンブスの探検に加わった人たちの中には、その後傭兵として各地の軍隊を転々とした者もいて、そうした人たちが、さらに世界中に梅毒を広めました。フランスのシャルル8世が起こしたイタリア戦争では、ナポリを征服した軍人たちが売春宿に殺到して、そこで梅毒が拡散されます。

フランスの軍人がうつしたのか、イタリアの娼婦がフランス人にうつしたのかは定かではありませんが、イタリアでは「フランス病」、フランスでは「イタリア病」と呼ばれました。

フランスから帰国した兵士たちは、それぞれの故郷に帰るとそこでさらに梅毒を広めます。ドイツの皇帝マクシミリアンの秘書は、梅毒の症状を書き残しました。「兵士の中には、頭の上から膝までウミにおおわれた者が何人もいる。恐ろしい病気で仲間から遠ざけられ、孤独のまま死を待つしかない」「患者をみたら、一目散に逃げるしかない」と。

古代から性感染症は病気としては知られていましたが、セックスで感染するとは知られていませんでした。コロンブスが新大陸から持ちこんだ梅毒も、感染についての無知から世界中にばらまかれました。