安息日にはキスは禁止

最近では日本人も人前で男女がキスを交わすことが珍しくはなくなりましたが、日本人の風習に根付いているとは言えないでしょう。欧米人は、恋人同士だけでなく、親子や兄弟、仲の良い人同士でキスをするのは当たり前。

昔は、男性が女性に出会うと右手をとって甲にキスするという文化もありました。手を差し出した女性の、指を少し曲げて受ける姿は優雅です。国によって作法には多少の違いがあり、イタリアでは直に唇をつけますが、フランスやイギリスでは手に口を近づけるだけで、実際には触れません。ただ、唇を合わせるキスを人前ですることは、それほど昔から公認されていたわけではありません。

玄関先でキスをして逮捕された船乗り

17世紀のアメリカのピューリタンには厳しい戒律がありました。社会が乱れて、姦通をする者、酒に酔って暴れる者、日曜日に教会にいかない不届き者が増えたため、厳罰を科する州も出てきました。日曜日の外出やパーティを禁止したり、セックスも禁止する法律を作った州もあります。

1656年には、長い航海から自宅に戻った船乗りが、久しぶりに自宅に戻り玄関先で妻と抱擁してキスを交わしたところ、逮捕されてしまいました。その日が日曜日だったため、「禁止行為」を見咎めた近所の人が通報したことにより、発覚したのだとか。安息日に、公衆の面前でキスをするという「ワイセツ」な行為をしたかどで、船乗りは鎖の足かせをつけられ、近所の見せしめにされたそうです。当時は、キスは人前でするものではありませんでした。

キスにも色々あります

男性と女性が愛し合えばキスをするものですが、クレオパトラの時代には男女はキスをしなかったそうです。古代ギリシアでは、低い身分の者が高い身分の者に対して敬意を表すためにしていました。キスが、男女の愛情表現になったのは、古代ローマの時代以降です。

最初は唇を合わせるのではなく頬や額へのキスが愛を交わす方法のひとつとなり、唇を合わせるものが主流となり、舌を絡ませるディープキスへと発展したそうです。古代中国やペルシアでは、唾液を通して肉体に精気が移ると信じられていて、特に若い女性の唾液は「秘薬」とされていました。いわば、「唾飲み健康法」です。

キスを人前ですることは昔から公認されていたわけではなく、1920年代に映画のワンシーンとして2分間のキス場面が登場したのがきっかけです。それまで、人のキスシーンを見たことのなかった人たちが、初めて他人のキスを見て真似をするようになったそうです。

愛を交わす時の基本であるキスの歴史はそれほど古くはありません。人前ですることがワイセツとされた時代もあり、安息日にしたために罰せられることさえありました。今では信じられないような話です。