作家マゾッホのマゾヒズム

「マゾヒズム」は「サディズム」の反対で、イジメられることを好む性的な傾向です。比較的、社会的身分の高い男性に多いと言われ、医者や弁護士、企業経営者など普段は尊敬される職業の特徴とも言われます。19世紀の小説家マゾッホが書いた小説に、被虐的性行為を悦ぶ姿が描かれていたことから、こうした性が「マゾヒズム」「マゾ」と呼ばれるようになりました。

なお、「マゾヒズム」は日本的発音で、英語では「マゾキズム」、ドイツ語では「マゾヒスムス」のように発音します。

マゾッホの描いた世界

レーオポルト・フォン・ザッハー=マゾッホはオーストリアの小説家で、「毛皮を着たヴィーナス」というマゾ的作品を著わしたことで有名です。美しい未亡人ワンダと出会った青年ゼヴェリーンは、彼女に自分の性癖を告白し、自分をムチで打ったり、足で踏んづけたりしてくれるように頼みます。最初は拒絶したワンダですが、愛ゆえに受け入れて、いつしか奴隷と主人の関係ができあがります。素肌に毛皮のコートを着ただけのワンダが、皮の鞭で打ち付けると、ゼヴェリーンは歓喜の声をあげてひれ伏しました。

マゾッホは幼いころに神童と称賛され、20才で大学講師となります。「毛皮を着たヴィーナス」で成功したのちは、順風満帆の生活を送りました。サド侯爵が人生の半分を牢獄と精神病院で過ごしたのとは対照的です。

実生活でも小説の通りの生活をした人

「毛皮を着たヴィーナス」がヒットしたのち、マゾッホはアウーラという女性と結婚します。彼はアウーラに、小説と同じワンダという名を名乗らせ、小説と同様に、10年間のマゾ的生活の契約を結びます。「ワンダが女主人として、マゾッホが奴隷としてどんな命令にも従う」という内容だったそうです。妻に、高価な毛皮のコートやムチやハイヒールを与え、毎晩ハードはSMプレイに励みました。

だんだんマンネリ化すると、街で男性を見つけてきて妻を抱かせ、それを覗き見してマゾ的悦楽に浸ります。10年が経過すると、当初の契約通り二人は離婚して、それぞれ別々の相手と再婚します。離婚後にワンダが著わした告白書によれば、ワンダにはサド的傾向はなく、あくまでも契約上の約束としてプレイをしていたと語っています。この点も小説とよく似ています。

マゾッホはアウーラと結婚する前にも、人妻マニー・ピストールと愛人関係にあり、契約書を交わして隷属していました。この頃に、毛皮を着たマニーにマゾッホがひざまずく写真が現存しています。

「マゾ」「マゾヒズム」の語源は19世紀の小説家マゾッホの名にちなんだものです。マゾッホは小説の中でマゾの性行為を表現しましたが、実生活でも実践していました。