オナニーは旧約聖書から

「マスターベーション」の語源は諸説あり定かではありません。ギリシア語の「マヌス」(手)と「スタルペア」(けがす)の合成語と いう説や、「マス」(男性器)と「タバティオ」(興奮)とが語源という説などがあります。オナニーの語源は、旧約聖書に登場する「オナン」という男性の名前が語源です。神様の行為として崇められることがある一方で、「罪」とされた国もあり、厳しい罰則もありました。


膣外射精がオナニーになった!?

旧約聖書の創世記によれば、オナンはユダの命令で、早死にした兄の妻タマルと結婚しなければならなくなりました。子孫を残すことが使命でしたが、オナンは自分と兄嫁の子が兄の子とみなされ、遺産もその子にわたってしまうことを嫌がっていました。そのため、兄嫁とのセックスに際しては膣内で射精をしないで、地上にこぼしました。いわゆる「膣外射精」で妊娠を逃れたわけです。

聖書によれば「産めよ増やせよ」は神の意志ですので、生殖を目的としないセックスは罪です。「膣外射精」は神の意志に反した行為で、生殖できない射精であるマスターベーションも同様にみなされ、オナンの名前から「オナニー」と呼ばれるようになりました。オナニーの起源は膣外射精のことだった、というわけです。

オナニーが「罪」になったわけ

古代エジプトでは、太陽神ラーがオナニーによって原初のカップルを作ったとされているため、オナニーは祝福の対象でした。古代ギリシアに登場する青年神ヘルメスは、牧羊の神バンに性欲を鎮めるための方法として、オナニーを伝授しました。キリスト教的には生殖行為ではないオナニーに否定的な見方もある一方で、ポジティブにとらえる文化も存在しました。

しかし、18世紀に「害」という説が発表され激しく嫌われ始めます。スイスの学者が「マスターベーションがもとになる病気について」という書を著わしたことがきっかけとなり、ヨーロッパ中に「反オナニー旋風」が巻き起こります。「精液の消耗が体力減退につながる」と主張され、やり過ぎると廃人になると警告されたため、忌み嫌われました。まるで麻薬並みの扱いです。

オナニーができないように学校のトイレのドアはくりぬかれ、現場を見つかると「退学」という罰則が設けられたりもします。家庭でも厳しい監視下に置かれ、性器を氷で冷却されたり、尿道を焼かれたりということもあったそうです。女性のオナニーも禁止され、癖の治らない子はクリトリスを焼きゴテで焼かれることもありました。今では、まったく科学的根拠の認められないデマのおかげで、多くの少年少女が悲惨な罰をうけることになりました。


「オナニー」は旧約聖書の登場人物オナンが語源ですが、「罪」の意識とつながり、禁止されたり罰を与えられたりした悲惨な歴史もあります。